先日の赤鱲角の様子。
はじめに
大陸が去年末に清零(ゼロコロナ)を諦めると、それよりずっと前からさっさとしちめんどくさい手続きを廃止したかったであろう香港政府もそれに追随するようにてきぱきと諸手続きを廃止していった。
去年夏までの状態は前回の記事を参照:
旅行者に関係するものを中心に簡潔に時系列にまとめると(抜け漏れあったらごめんね)、
2022年9月26日 【香港】「3+4」から「0+3」へ。もうすでにこの時点で特区政府高官が将来的なウイルスとの共存可能性についてポロッとお漏らししてしまったりしている
2022年11月11日 【大陸】国務院《关于进一步优化新冠肺炎疫情防控措施 科学精准做好防控工作的通知》(二十条)公布*1
2022年11月末〜 【大陸】清零政策を批判する抗議活動が各地で展開(白紙革命)
2022年12月7日 【大陸】国務院《关于进一步优化落实新冠肺炎疫情防控措施的通知》(新十条)公布*2。大幅な規制緩和へ
2022年12月14日 【香港】公共の場における位置情報アプリ『安心出行』「疫苗通行證(ワクチンパスポート)」のスキャン廃止、および入境者の検疫期間に表示される「黃碼」の廃止*3。事実上の「0+0」へ。
2022年12月29日 【香港】入境時の強制檢測措施および「疫苗通行證」の廃止
2023年2月6日 【香港】海外および台湾からの入境者のワクチン接種規定廃止*4
2023年3月1日 【香港】口罩令(マスク着用令)廃止*5
2023年4月1日 【香港】入境48時間前以内のPCR検査または24時間前以内の抗原検査が廃止*6。なお現在も入境後5日間は毎日抗原検査を行うことが推奨されている(建前として)
——というわけで、現状入境に関する防疫措置に限って言えば香港との往来は完全に「復常」しているといえる。先日香港国際空港を利用する機会があったのだが、去年までは検疫区域が設定されており、便数も多くないため廃墟のような様相を呈していた赤鱲角も、客も戻り様々な店舗も再開していて、そういえば空港ってこうだったな、と懐かしく感じた。でもそもそも深夜便利用が多過ぎるため、昼の空港の賑わいなんかあんまり知らないのでは、という部分はある
西安でも起きた諸事件を以ってしても「清零」を放棄するに至ってないので、大陸が方針転換するにはもっと致命的な破綻か、領導人の急死みたいなきっかけが必要とされている感じがあり(他の国内問題もそうだけど)、このしんどい措置は冬季五輪や党大会の後も暫く続くのだろうな、と悲観的に見ている…
— のうやくん👲🏼💂🏻 (@Yamidoh) 2022年1月17日
「致命的な破綻」は全国的な抗議行動という形で現出しちゃったね……
空港で下午茶
なんと制限エリア内で飲食店が営業しているのである。区域外のM記しかやっていないやばい状況ももう終わったのですね……!フードコートみたいになっているところにブリティッシュブレックファストのお店や雲呑麺の店などが並んでいる。
莆田滷麵
別に香港らしい飯にこだわろうというわけでもなかったので、シンガポール発の福建料理チェーン「莆田」で麺をすすった。店名は福建人の僑鄉の名前。沙茶麵や扁肉湯などもありつつ、莆田の名を冠しているので滷麵も食べてみた。
滷麵はとろみのある滷湯に麺を入れた福建一帯の料理で、各地にいろいろなバリエーションがある(マレーシアでは漳州の系譜を引いた、茶色い色味の料理として定着している)。自分はリンガーハットが好きなのだが、莆田滷麵は長崎ちゃんぽんの源流とも言われているのでぜひ食べてみたかったのだ*7。
一杯だいたい100ドル弱で、円安なので結構する。とろみのあるスープは海鮮と豚肉の煮込まれた味で、まんまちゃんぽんのあれなのである。ややデロっとした麺もよく絡んで非常にうまかった。こいつはかなりいいものですね……箸休めの菜脯とキクラゲも口の中のリセット効果が高く、シャキシャキしていて食欲を増進させる味だった。
沙茶麵。廈門で食べたものと違ってかなり辛かった
コロンス島を対岸に臨む旧市街にやって来た。朝は沙茶面、これ海鮮トッピングの充実した沙爹味の車仔麵ですね。当然美味い…口が一気に南に戻って来た pic.twitter.com/OlWA2S2B0g
— のうやくん👲🏼💂🏻 (@Yamidoh) 2019年2月8日
香港国際空港の新設備
先月末の『東方日報』に香港国際空港の新設備についての記事(半分広告?)があった。なんでも制限エリア内では世界最長の歩道橋、無人コンビニ、謎の遊具ができているらしい。ほ〜〜ん、と流し読みしていたが、自分が乗った便はちょうどこの「天際走廊」なる歩道橋の先だったので、この機会に紹介されている全てを見ることができた(謎遊具「奇妙巨蛋」は写真なし)。
というか、2020年10月に建設中のこいつをみたことがあった。人間が歩いて渡るのか、これ
①無人コンビニ「travelwell」
無人コンビニ(自助商店)というと、何年も前に大陸で爆速で流行り爆速で廃れた印象があるが(日本も数年前に首都圏の駅とかに設置されたというニュース見た記憶があるけど、どうなったのだろうか)、それを自分も漸く体験することができるらしい。
無人コンビニは「天際走廊」の付け根にあった。全面ガラス張りだから自然採光で十分、という感じなのかもしれないが、この渡り廊下のアプローチ部分はなんかやたら暗いように感じた。
改札機にクレカをかざして入場する
無人コンビニは興味深そうに眺めている数人が入り口付近にいるだけで、お客さんも無人だった。入り口には改札機が置いてあり、壁面には色々説明書きが書かれている。
この改札機にクレカをかざして入場するのだが、ここでデポジット800HKDが掛かる。いきなり改札機に800HKDと表示されるので、普通にビビってしまう。多くの人もこの表示にビビって入場を躊躇っていた(写真右手の鬼佬も)。
自分も当然ビビっていたのだが、傍から係員がやってきてそれデポジットだよ、と教えてくれたので彼を信じて入ってみることにした(無人とは……)。壁面の説明をちゃんと読めば分かったことかもしれないが、まあそこまでして利用してみよう、という気にはならんよな……僕が入場するとそれを見て安心した他の人たちもぞろぞろ入場していく。
店内の様子
店内はまあ、普通の空港のコンビニのような品揃えだった。棚から商品を取ると勝手に計算してくれ、レジを通さずにそのまま改札を出る感じ。知ってはいたが微妙に落ち着かない気持ちになった(デポジット返ってくるのか、ちゃんと集計されてるのか、など)。そわそわしながら奶茶のペットボトルを持って出る。「それで大丈夫ですよ」、と係員に言って欲しかったけど(無人の意味とは……)、彼はどこかへ行ってしまっていた。不安だ……
②天際走廊Sky Bridge
「天際走廊」は「地平線の渡り廊下」、とでも訳せばいいだろうか。去年(2022年)11月に供用が始まった。エアバスA380も下を潜ることができるサイズの歩道橋を作ることで、島になっていたT1衛星客運廊(旧北衛星客運廊)に一々バスに乗って移動しなくて済むようになった。疫禍で発着便数が激減し、北衛星客運廊の使用が停止されている間に作ってしまったわけで、これは怪我の功名なのだろうか(それ以前からずっと計画されていたのかもしれないが)。
ほとんど全ての移動はエスカレーター(動く歩道含む)で済むようになっているが、まあ機内持ち込みの荷物が多い人間にとっては従来のバス送迎の方が楽ではあったかもしれない。頗る眺めは良い。
SKYDECK
T1衛星客運廊側に降っていくエスカレーターの奥に、展望スペースが用意されていた。この歩道橋の構造や設計の解説、空港全体の整備計画などの展示パネルも置いてある。残念ながら外には出れなかった。
天気が良かったので、対岸の屯門市街や新界の山々も見渡せた
赤鱲角全体の模型。
模型などもあり、空港内の旅客捷運系統(新交通システム)乗り継いだ移動はこういうルートだったのか、などとわかり面白かった。この歩道橋と同時期に新たな滑走路の供用も始まっており、それに合わせたターミナルも建設中らしい。
おわりに
太平洋咖啡Pacific Coffee
寄り道などをしたので結構時間がかかったが、T1衛星客運廊に着いた。Pacific CoffeeのT1衛星廣場店は、2017年開店で、ネオン、豆タイル、通花鐵閘(広東語口語のフレーズがあしらわれている)に取材した、ゴリゴリに香港特色推しのデザインになっている*8。とはいえあんまりゴテゴテしていなくて(そういう”懷舊“を謳ったお店も多いけど、えてしてラー博とか半兵ヱみたいになってしまう嫌いがある)、品の良い感じに纏まっている。
テイクアウトしたコーヒーをしばきつつ、T1衛星客運廊より「天際走廊」を望む。T1衛星客運廊の片隅には給水機の置いてあるコーナーもあり、紙コップも置かれていた。搭乗時間を待ちながら、静かな夜の空港もいいけど、昼間の活気ある空港って本当にいいものですね……という気持ちになっていた。また来たい
*1:国务院联防联控机制公布进一步优化疫情防控的二十条措施_滚动新闻_中国政府网
*3:自主隔離期間終了まではチンパスのQRコードが黄色で表示される。期間終了後は青色(藍碼)に自動で更新される。前回記事参照
*5:これは《預防及控制疾病條例》に基づいて行政長官會同行政會議が定めた時限付き規例Regulationであった
*6:香港特別行政區衞生署 健康及檢疫資訊申報 HKSAR Department of Health Health & Quarantine Information Declaration
*7:食い物の発祥や由来はかなり伝説含みで考証が難しいジャンルなので深入りは避ける。取り敢えず、長崎の老舗は福建料理を元に開発したと言っているが具体的な料理名は明言していない。莆田滷麵や福清燜麵が近いというのも実際の関連は不明なので、タイトルでは「ご先祖さま」などと書いているが、福建一帯の麺料理が遠縁の親戚なのかもしれない程度の力加減で、ご承知おき下さい。
*8:https://www.facebook.com/pacificcoffee/posts/10155865652518083