亞的呼聲 Adiffusion

中華と酒と銭湯と

虚ろな心に火を灯せ、或いは男5人の『ゆるキャン△』

  • 買い出しと松田散策など
  • 火起こしと、晩飯
  • 燗銅壺
  • 燻製
  • 帰路、鶴巻温泉
  • まとめ
  • 追記:

 燃え尽き症候群という言葉がある。また、人の命は蠟燭の灯火に喩えられたりもする。我々人間は、日々何かを火に焚べながら己の生を全うせんとしている。

 去年の終わり頃、自分は非常に疲れていた。“燃え尽き”かけていたのかもしれない。何か漠然と、““活力””を注入しなければいけない気がした。そうだ、火を焚べよう。悲しみも暖炉で燃やすものだと吉田拓郎だか森進一だかも言っている。というわけで、同じように疲れている人間が集まって火を焚べることになった。

買い出しと松田散策など

別に寒空の下テント張ったりはしたくないので、床暖、灯油ヒーター、寝具付のクソヌルコテージを借りることになった*1。昼前に買い出しを行う。

20180127-104105-9

 山奥へのバスが出るのは小田急の新松田だったが、近傍の商店情報が何も分からなかった。インターネットは本当に使えない。そこで、隣のいかにも棒倒しが好きそうな名前の駅に行き、マックスバリュで買い出し。普段まともに自炊をしないオタク連中(含自分)は本当に買い物が下手。正直買い過ぎであった。

*1:余談だが、買い出し中魚屋のおっちゃんに寒さを心配されたので上述のヌルい環境を説明すると、「そんなんハイアットに泊まるのと変わんないじゃねえか」なるコメントを賜ったので、今回泊まったコテージは通称「ハイアット」となった。「ハイアット」、交通の便は良くないけど本当にオススメです

続きを読む

「銭湯と横浜」展に行ったこと

はじめに

 標題通りの内容です。最近、都内への定期券が失効したため専ら横浜市内で活動することが多くなっている。我々港北の民は、ともすれば「横浜都民」と揶揄されるほど東京との結びつきが強い人種なのだけど、たまには横浜市歌の響き渡る市営地下鉄に乗り、柳宗理デザインのアレコレを愛でながら愛港心を涵養しようというわけである。
ということで、先月この↓ツイートを見て、

横浜のど真ん中と地元港北で銭湯にまつわる企画展を同時開催していると知ったので、そのどちらにも行くことにしました。連動企画ということもあり、両展示の差異と工夫がわかって楽しかった。

続きを読む

鹹肉(咸肉, 中華風塩豚)を使う:老干媽炒飯(老干妈炒饭)

  • ◉はじめに
  • ◉老干媽(老干妈)とは?
  • ◉用料及食譜
  • ◉実食及感想
  •  補:老干媽いろいろ

◉はじめに

 以前こちらのブログで紹介した「鹹肉」を覚えているだろうか?冬場の保存食料として華中地域を中心に作られているものである。家でも美味しい上海菜飯を作るため、日本の郊外型ニュータウンにおいてその再現を試みた記事は以下の2つをご覧下さい。

mounungyeuk.hatenadiary.jp

mounungyeuk.hatenadiary.jp

今日急に自炊をしなければならなくなったので、今回も残りの鹹肉を使って何か作ってみようと思ったが、菜飯だと炊く時間がかかるし、なにより冷蔵庫にあんまり野菜が残っていなかった。
 冷蔵庫に生卵、冷蔵庫に米、葱があったので、炒飯をやってみようという気持ちになった。味付けは…そうだ、以前どっかで読んだ老干媽炒飯にしよう。

続きを読む

香港土産の柱侯醤で「蘿蔔炆牛腩(牛バラと大根の煮込み)」をやってみる

  • はじめに
  • 食譜
  • 結果・考察

はじめに

 年初の週末に数日、香港に行ってきた。今回は完全に行楽目的で…天気は悪かったけど色んなスポットをまわることができた。

20180106-084859-1220180122-183015-9

 蓮香樓に案内する途中でたまたま通りかかった調味料の店(九龍醬園)。色んな調味料が並んでいて楽しい、が、全く使い方がわからないので色々話を伺ったりした。値段がラフな蘇州碼で書かれていて解読に非常に難儀する(店主が読むのに苦心している様子を面白がってくれて、途中からクイズ形式のやり取りになった)。

続きを読む

ブログ名を変えた

標題の通り、ブログ名を変えた。

 というのも、当初なんとなくつけていた「無農日記」なるタイトルがあんまりしっくり来ていなかったからだ。「残留農薬」というHNをマイナーチェンジを経ながらも10年位使い続けていて(Twitterの「のうやくん」もそのバリエーションの一つである)、このブログ名もなんとなくその惰性で付けた感じであった。

 当初は何かしら、140字より多く書きたい時に使うくらいにしか考えていなくて、ブログの色がどんなものになるかあんまり想定できていなかったので、まあそれでも良かったのだけど、10数記事書いてみて、やはりこのブログは日本も含めて東アジアの文化・社会的な内容が多くなりそうなこと(当初から特に、中華・酒・銭湯の三本の矢を念頭に置いていたが、銭湯関連記事が無い…)、その際「●●日記」だと、名前からどんな内容のブログなのかはっきりしないし、イマイチ印象にも残りにくいと思った。

そこでちょっと色々考えてみて、結果としてブログ名を

「亞的呼聲 Adiffusion」

とすることにした。由来なんかどうでもいいことだけど、どうせすぐに蘊蓄捏ねたくて堪らなくなりそうなので(哀しいオタクの性)…大枠は、かつて香港にあったイギリス資本のラジオ・テレビ放送会社の「Rediffusion」から。この局は当初はBBCラジオの再放送番組から始まったので、RediffusionはRe・diffusion(再・放送)の意の造語だ。彼等は香港進出時にその社名を広東語で音を当てた「麗的呼聲(麗しい呼び声)」なる最高の翻訳に成功した。自分はこのセンスに惹かれていて、このブログを通して何かを発信(diffusion=呼聲)していくことを踏まえて、これに準じた名前を付けてみようと思った。本家は繰り返しを示す接頭語のre-を使用していたが、自分はa-を充てる事にした。a-は広東語の「亜」に通じるとともに、ギリシア語由来の接頭語で否定を表す。このブログからアジアについて発信すること、このブログではあんまり真剣に発信しないこと、この両方を表している、知らんけど。

http://fs1.omghk.com/mpw/2425/S00258/1430559497685_7984D47CC194A8E3918780E9EB4B374F.jpg

 正直どんな内容のブログなのか明示することには失敗してると思うし、印象に残るかも微妙な感じだ。耳馴染みも悪いし。薀蓄から入って決めていく中2病臭いキモ人(きもひと)の悪い、酸っぱ臭い所がモロに出ている。とはいえ、それなりに意味は通ってると思うので、今後はこれでやっていきたいと思う。宜しくお願いします。

【訳】植民地香港の最大の裨益者は誰か:イギリス、中国、香港?(by John Carroll, HK: SCMP, 17/01/18)

  • 【文例】
  • 【文法】
  • 【語註】
  • 【譯】

最近自らの英語力の弱さをひしひしと感じています。ということで、以下の英文記事を訳して練習したい。自分の訓練のための山寨訳なので、例によって権利関係は全部Carroll先生とSCMPにあります。

www.scmp.com

 寄稿者のJohn Carrollは香港大学の歴史系教授で、主要著書に‘Edge of Empires: Chinese Elites and British Colonials in Hong Kong’および‘A Concise History of Hong Kong’などがある。米国籍だが中等教育までを香港で受け*1、これらの著作には中国語資料も数多く使われている。後者は《香港簡史:從殖民地到特別行政區》との題で中文訳されているが、著者の了承を得ずに「和諧版」が出たという騒ぎもあった*2。現在は改訂版が出版されているのでそのような心配はなさそうであるが…

続きを読む

絶対にやって来ない“鴨脖子”ブームを応援する

はじめに

www.google.co.jp

 例えばこのようなニュースが続々流れたように、2017年は年末にかけて「蘭州拉麺」出店ブームが再発見された。澄んだ牛骨スープに手延べの麺は、職人が日本に流入し続ける限り、これからも全国各地に増えていくことだろう。

https://www.instagram.com/p/Bcm-FBXhTpD/

「ザムザムの泉」(西川口)の肉蛋雙飛。非常に美味しい

 その一方で、ここ数年にもう一つのブーム(?)が底流していることはあまり注目されていない。それは「鴨脖子」だ。
 もとは清朝期の常徳に始まり、湖南から四川・湖北へと広まった料理であるらしい*1。鴨脖とはダックの首のことであるが、首をはじめさまざまな部位に味付けして販売しているのが普通だ。これらをタレで煮て漬け込んだ後(この工程を「滷」という)、乾かしたりの工程を経て、肉の表面は紅色〜茶色に、艶やかに色付く。味付けも様々あるが、湖南や四川という地名から分かるような激辛の麻辣味や、鹵水、可樂など様々な味付けが存在する。
 この鴨脖専門店、自分が思うにニューカマーによる新興のチャイナタウンがある程度の規模に育った際に登場する、ある種の指標として見ることができるのではなかろうか。現に池袋、西川口、亀戸などのチャイナタウンでは、一昨年〜去年に掛けて多くの鴨脖専門店が開店している。

続きを読む