オミクロンくんの登場で再びかなり遠い場所になってしまった都市の*1、食べたいもの食べに行きたい場所のことを、記憶を頼りに書き留めていこうと思う。中央政府が「清零(ゼロコロナ)」方針を放棄しない限り、そして香港政府が内地との往来を優先する以上、恐らくは来年以降もずっとこんな調子なのだろうなと思うと暗澹たる気分になってしまうが……
はじめに
茶樓で飲茶。嶺南に来た人なら必ず享受すべきコンテンツでありインフラだが、市區(都市部)のちゃんとしたところだと値段もそれなりにして、(特に僕のような無産階級にとっては)気軽に楽しめるものではない。また、點心車(カート)形式の店などでは人気の点心が出るとすぐに客同士の争奪戦になってしまうし、常に人が出たり入ったりしているので慌ただしく、あまり長居もできないのだ(そういう熱気が感じられるのも香港らしさかもしれず、必ずしも嫌なものというわけではないが)。
しかし本来茶楼は街坊、社區(地域コミュニティ)のお茶の間として存在した筈であり、誰もが思い思いの過ごし方をしているのを眺めたり、会話の輪に入ったり入らなかったりするのを気軽に楽しむことができる場であった筈だ。そういう店は香港島中心部等にも勿論あるのだけれど、本記事では主に新界の村々にあるこうした茶楼を紹介する。
さもしいのでつい値段の話をしてしまうと、こうした村の茶楼は村の人々が日々通うことを前提として経営されている為、総じて都市部に比べて値段が異様に安いのが特徴であるが(世界屈指の家賃がかかっていない味か?)、その魅力は経済的であることだけではない(というか、地域コミュニティが維持し地域コミュニティのために努力して奉仕されているインフラにタダ乗りする、というだけの楽しみ方はあまり感心出来るものではないだろう)。その立地や建築、常連のカラー、点心の品揃え(そして価格も)、其々に特徴的で実に楽しみ甲斐のあるものが多いのだ。そのためだけに小巴に乗り足を運ぶ価値のある、靚平正(レペゼン)新界の銘店に行ってみよう。
- はじめに
- ①兆利飯店(上村)
- ②得記茶樓(古洞)
- ③唐人居茶樓(屏山)
- ④吉祥茶樓(厦村)
- ⑤新華茶樓(薄扶林)
- ⑥協成茶樓(蕉徑)
- 番外:点心の無い茶楼たち
- [番外1] 錦益茶樓(古洞)
- [番外2] 新蘭芳酒樓(馬尾下)
- おわりに
*1:日本におけるオミクロン株の症例確認に伴い、12月3日より非香港居民の日本からの入境は不可能になった。参考:オミクロン株感染抑止に向け入境規制を強化、日本もハイリスク国に指定へ(香港) | ビジネス短信 - ジェトロ