「皇都戲院大廈」という建物が、香港島北岸東部、北角(ばっごっ, Northpoint)の街中にある。北角はその名の通り香港島最北端に位置している、開港後早期に発展した福建人(と潮州人)の街で、戦後には上海人も流入し、1950年代-60年代初頭を通じてナイトクラブ、ダンスホール、映画館などが立ち並ぶ娯楽産業の中心地「小上海」として発展してきた。
この建物は1952年に璇宮戲院(Empire Theatre)として建設され、1959 年にはモール・住宅のビルを増築(皇都大廈)し、名を皇都戲院(State Theatre)と改めて営業してきた、現存する戦後映画館建築の中では最古のものの一つである*1。映画館は1997年に閉館し、以降は卓球場として使用されているらしい。G階部分は細い路地が張り巡らされており、商店が並んでい(た)。
かつて民国上海からやってきた華やかな娯楽文化がこの地で花開いていたことを今に伝えるこの建築であるが、第1級歴史建築に認定されているものの、再開発か保存かを巡って去年以降大いに紛糾している。
*1:活現香港「活現香港對舊皇都戲院(前璇宮戲院)文物價值的評估報告」、2頁(2018年1月8日閲覧)。活現香港は香港の歴史文化、歴史建築の顕彰・保全を目的とする団体(企業?)。スタディツアー(要予約:Tours - 活現香港 Walk in Hong Kong)もやっている