亞的呼聲 Adiffusion

中華と酒と銭湯と

日原古道に行った(その3:廃吊橋〜最高地点)

(前回まで:その1その2

採掘場向かいの広場から先を進む。
ここから先は地図でも実線が失われるので無理はせず、行けるとこまで行こうという感じになった。

20171103-110951-57

 道の傍らに早速物々しい坑口が口を開けていた。この山、石灰採掘で穴だらけなんだろうな、対岸の発破とか地震とかあったら怖いですね。
 とはいえ先ほど眺めた奇観の余韻もあって、そんな感じで脇見をしつつのんびり楽しみながら歩いていたのだ。その後に訪れる恐怖も知らずに……

20171103-111043-59

 それは地図上に実線が失われてからほどなく待ち受けてきた。ご覧の通り、平場が完全に消滅しているのである(まあ、かすかに生き物の通れそうな踏み跡を確認できるが…)。画面右側、緑の茂っている部分は崖。砂利の堆積(ザレ)の上を倒木や枯葉が覆っていて、しがみつけそうな岩や木のある所まで、とてもじゃないが一度も滑らずに渡りきる自信がない。

20171103-112945-61

 どうにか高巻きをして、木や岩伝いに半分滑り落ちるようにして渡りきる。全行程を振り返ると、正直ここが一番危険というわけではなかった気もするが、この先は脳内物質出まくっていてその辺の感覚が完全に麻痺していたからそこまで恐怖は感じなかったので、全行程最恐経験はこの谷です。
 とにかくここで完全にビビりきった自分は、フィルムカメラをバッグの奥底にしまい込み、そして途中で撤退して再びこの道を戻る必要がないことを延々願うようになった。

20171103-113137-63

 道跡は明らかに登りを要求してくるが、これは往年もこんな感じだったのだろうか。人間の歩く道ではないと思うのだけど……なんとか四足歩行と勢いで突破する。平家物語読んでてよかったです。

20171103-114451-66

 登りきった先に平場と石垣を確認して喜ぶ。こうしてみると、道が比較的残ってるところは崖や岩場、段差といった元々の地形をある程度利用して作られていることがなんとなく分かる。とはいえ土砂の堆積には抗えないのだろうけど…

20171103-114834-71

 道を進んでいき、古道が岩山(これが恐らく南側の「トホウ岩」である)の縁をなぞるようにして(恐らく)ピークに達したところで、近代的な人工物がお目見えする。といっても膝丈くらいの高さしかない擁壁である。一応橋らしい。怖い…

20171103-114925-72

橋が作る平場は廃止された鉱山関連施設から伸びるケーブルを支持するために活用され、中々歩きにくい感じになっている。こんなところで絶対に転びたくないですね。

20171103-115315-79

 一番見晴らしのいいスポットなので眺めは絶景。ちょうど日原渓谷両側の「トホウ岩」がもっとも接近する地点なので、鉱山の様子がはっきりと伺える。崖下に鉄橋の半分が倒されたまま放置され、坑口から地下水がドバドバ流れているなど、景色の異常さに磨きがかかっている。まさに非日常、最高です!それにしても、高い…この間多少は時間があった筈なのだが鞄の中のフィルムカメラの存在を全く気にかけることはなかった。肝心の絶景を前に、心の余裕が失われていた。
 絶景を眺めながら水分補給などして休憩。ここでちょうど12:00であった。カメラを気にすら程度の余裕さえ失われていたにも関わらず、これで大体全行程の2/3程度、やはり意外とかからないのでは?などと思ってしまっていた。当然ながらこれは大きな勘違い、慢心であった。なにせ残りの大部分は実線じゃない部分=人間の通る道でない部分なのだ。そしてこの橋を過ぎて尾根を曲がった先の光景で、これから先の険しさを覚悟することになるのだった。

20171103-120042-85

この絶壁、この高さ。めまいがしてきた。大丈夫なのだろうか…?

 

続く

 

廃道踏破 山さ行がねが 伝説の道編 (じっぴコンパクト文庫 ひ 1-3)

廃道踏破 山さ行がねが 伝説の道編 (じっぴコンパクト文庫 ひ 1-3)