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中華と酒と銭湯と

絶対にやって来ない“鴨脖子”ブームを応援する

はじめに

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 例えばこのようなニュースが続々流れたように、2017年は年末にかけて「蘭州拉麺」出店ブームが再発見された。澄んだ牛骨スープに手延べの麺は、職人が日本に流入し続ける限り、これからも列島に広がっていくことだろう。

https://www.instagram.com/p/Bcm-FBXhTpD/

「ザムザムの泉」(西川口)の肉蛋雙飛。非常に美味しい

 その一方で、ここ数年にもう一つのブーム(?)が底流していることはあまり注目されていない。それは「鴨脖子」だ。もとは清朝期の常徳に始まり、湖南から四川・湖北へと広まった料理であるらしい*1。鴨脖とはダックの首のことであるが、首をはじめさまざまな部位に味付けして販売しているのが普通だ。これらをタレに漬けた後、煮たり、干したり、焼いたりの工程を経て、肉の表面は紅色〜茶色に、艶やかに色付く。味付けも様々あるが、湖南や四川という地名から分かるような激辛の麻辣味や、鹵水、可樂など様々な味付けが存在する。
 この鴨脖専門店、自分が思うにニューカマーによる新興のチャイナタウンがある程度の規模に育った際に登場する、ある種の指標として見ることができるのではなかろうか。現に池袋、西川口、亀戸などのチャイナタウンでは、一昨年〜去年に掛けて多くの鴨脖専門店が開店している。

  チャイナタウンを歩けば一目で気付く筈のこの鴨脖専門店であるが、悲しいかな日本語メディアではあまり注目を集めていないようだ。蘭州拉麺と比べてしまうが、やはりその多少生々しい見た目も含め、日本人に馴染み深い麺類より遥かにとっつき難いこと、チャイナタウンが大々的に、そして以前のマイナスイメージを抑えてある程度肯定的に注目されるようになった時点で既に相当数が出店済であり、地域の華人住民のインフラとして街景に溶け込んでいたため脚光を浴びなかったこと、などが考えられよう。

 まあいずれにせよ、個人的には数年後に日本人が鴨脖バリバリ齧ってビール飲んでるとは思えないので、今の内にブームを「発見」しておこうと思うのだ*2。と言うわけで、今までに行った数少ない鴨脖の店を紹介しつつ、本ブログは絶対にやって来ないだろう「鴨脖子」ブームを(勝手に)全力で応援します!

①李記 西安肉夾饃(池袋)

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 池袋で食べたのは、中国東北料理の名店「永利」の隣にあるこの店。店に入った所のショーケースには味付けされたダックの各部位が並んでいる。持ち帰り客が多い印象だが、奥には飲食スペースも併設されていた。

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 鴨脖は2個500円。1個というのは首1本のことである。これを店の人が中華包丁でガンガンぶつ切りにして提供される。基本作り置きのため常温〜やや冷えな感じだけど、兎に角味が濃いので酒が進む。完全にアテですね。

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 店の名前になっている陝西省名物の肉夾饃(豚肉をナンを分厚くしたようなバンズで挟んだ中華式ハンバーガー、380円)も肉汁たっぷりで美味しかった(写真無し…)。ダックの各部位のほか、お馴染み臭豆腐や鶏・豚の各部位などおつまみ系が揃っている。全部位コンプリートしたくなるメニュー表だ。
 池袋北口には、この他「周黑鴨*3」や小魏鴨脖店(本店は新大久保)などの出店が相次ぎ、北口で一番目立つ中国物産店・池袋陽光城2階の陽光食坊も看板を見たら24時間営業の「好辣鴨」なる鴨脖推しの店になっていた。ここも肉夾饃が食べられるらしい。池袋の特徴として、レストラン型の多さが挙げられると思う。歓楽街ならではだろうか。(訪問日:2017年3月8日)

 

李記 西安肉夾饃
住所:〒170-0014 東京都豊島区池袋 1 丁目 2−7
時間:11:00~02:00

②王道麻辣鴨脖 西川口店(西川口

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 もはや全国区で有名になった(断言)埼玉の誇るチャイナタウン西川口は、中国物産店「好又鮮」の対面にある麻辣鴨脖の専門店。本店は川口駅の方にあるらしい。イートインスペースは無く、完全に持ち帰りだけのようだ。

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 購入後、近傍の公園で中国物産店で購入していた王老吉と一緒に食べる。食べる際に手が汚れないよう、使い捨てのビニール手袋をつけてもらえる。辛味が強くて旨い。甘い王老吉も辛口に合っていていい感じだけど、これはやはりビールだったなあと思う。前歯で肉をゴリゴリと刮ぎつつ、薄めの青島啤酒を流し込むと最高だろう。

 西川口の店としては、これまた「周黑鴨」など様々な店で提供しているようだが、この店の佇まいは池袋の「食堂」に対して「肉屋」の趣に近く、地元華人住民のインフラとして機能しているような印象を受けた。池袋でもみんなスーパーのついでに寄って買って帰るのだろうけど。(訪問日:2017年9月23日)

王道麻辣鴨 西川口二号店 (オウドウピリカラカモニク)
住所:〒332-0021 埼玉県川口市西川口1丁目21−4
電話:048-257-5885
時間:14:00~00:30

終わりに

まだまだ全然回れていないのでなんとも言えないが、晩酌のアテの選択肢として鴨脖が浮上して頂ければ幸いです。やはりインフラのような所があるのか、今回紹介した店はどちらも夜遅くまでやっているようだ。街中で見かけたら、是非一度はお試しあれ。ああ、ビールが飲みたい…

kinokaeri.booth.pm

尚、こちら↑には同様の潮流として香港式茶餐廳の進出についてもごく短い紹介記事を書いている。宜しかったらどうぞ。

 

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新・中華街 世界各地で〈華人社会〉は変貌する (講談社選書メチエ)

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*1:鸭脖子_百度百科

*2:勿論、本記事が全く先駆的な紹介記事になっているというつもりはなく、既に先行していくつかの店舗に関しては個別的に紹介がなされている。代表的なものとして:全国からオーダー殺到…!日本在住の中国人が愛してやまない亀戸「絶味鴨頚王」のカモの首と鎖骨とタンを食べてみた - ぐるなび みんなのごはんなど。とはいえ、90年代末の武漢を発として中国全土に広まった鴨脖が、ここ日本の新興チャイナタウンにも進出しつつある現象を指摘したのは本記事が初ではなかろうか、などと多少大袈裟に言ってみる

*3:中国の人気鴨脖チェーンだが、日本には公式に出店していないという。ここの鴨脖はめちゃくちゃ辛かった。