はじめに
屋外で中国茶を飲みたくなる、そういう時がある。
野点(久々の醉人香鐵觀音) pic.twitter.com/CT0T39j4Hm
— のうやくん👲🏼💂🏻 (@Yamidoh) 2021年10月3日
近所にオープンエアーの茶楼が存在しないので、中々外気に当たりながらお茶を飲む機会が少ない。となると自分で「野点」をするしかなくなる。次第に暖かくなってきたので、茶をしばきに出かけることにした。野点というと茶道のイメージで、キャンプで飲むものだとコーヒーのイメージが強いのだが、果たして中国茶でも野点は可能なのだろうか*1。
小倉橋下河川敷デイキャンプ
いい天気だったので、車に乗って河原に行った。持つべきものは運転免許証があり、この環境で酒を入れないで耐えられる精神力を持った友人。
風が強いが、火遊びから始める(河原なのでシートいらない気もしたが、この方が安定する)。これだけで既に酒が飲める雰囲気である
友達が持ってきたキムチ焼いて豚肉と食ったり、

バインミー。かなり美味かった
友達が漬け込んできた豚肉を焼いて、炙ったフランスパンに葉っぱと挟んでバインミーにしたりした。日々越南菜の研究に余念のない人間の作る越南菜、最高だ
作ってもらってばかりなのも悪いので、自分も叉燒を漬けてきた。前日夜に豚肩ロースを漬けダレ(叉燒醬、玫瑰露酒、蜂蜜、ニンニク、ネギ)と一緒にジプロックに入れ、モミモミ。この処理をした後に洗顔してニベアを顔に塗ったが、自分の顔も豚肩ロースも同じだなと思う。熾火だと火力が弱く、しかし火力が強すぎると表面が焦げるばかりで中まで火が通らない。難しい……
遠火でジクジク焼きながら、(本当は蜂蜜だけなのだが)蜂蜜をブーストした漬けダレを沸騰させて粘度を高め、塗っていくと、次第にいい感じの赤色になった。
叉燒が完成した。が、既にだいぶ満腹だったのに加え(毎回作り過ぎてしまう)、漬けダレに玫瑰露酒を入れすぎたのが災いしてかなりハマナスの香りが主張する出来になっていたため、あまり食指が伸びなかった。次回以降に改善していきたい。
しばく
満腹になり、酒も飲み終わったので食後のしばきタイム。2つの薬罐で湯を沸かす。大きい方はベトナムコーヒー用のもの、自分のケトルは焚き火に突っ込んで常に沸かした状態にしておく。
中国茶の青茶、黒茶は大抵抽出温度が100度に近ければ近いほど良いとされているので、火に突っ込んでおけば湯が常に沸騰しているのはかなりのメリットだ。湯温設定ができる電子ケトルを用意したり、バーナーなどで加熱し続けるより経済的でもある(自宅で茶を淹れる時は、駱駝牌の魔法瓶に熱湯を入れて使用しているが、やはりある程度の湯温低下は免れない)。
茶器は双十一に淘宝で購入した携帯茶具。茶盅、公道杯、茶杯*3がすっぽり納まる優れもの。茶葉は億儀茶莊でもとめた携帯用の茶缶。スクリュー式で密閉度が高く、金属製で頑丈。工業部品のような趣があって気に入っている。
茶葉は林品珍茶行(上環)の清香鐵觀音。焚き火で常に煙いから、清香型の鉄観音というのはあまりいいチョイスではなかったかもしれない。焙じた香りの強い、パンチのある茶葉の方がより適していたような気もする(香りや味の濃さでは、清香型も十分パンチはあるが)。キャンパーがやたらコーヒー党ばかりで、あまりお茶のイメージがないのもこういう所から来ているのかもしれない。
とはいえ、外メシならぬ外しばき効果で3倍美味く感じられる筈なので、茶葉の種類というのはあまり関係ないかもしれない。いつも屋内で静かに楽しんでいる中国茶を河原で焚き火しながら楽しむというだけで非日常感があって楽しく、美味しい。あと、外だから多少湯をこぼしてビシャビシャにしてしまっても平気、というのも中国茶向きではある
茶道の世界では、野点のことを「ふすべ茶」ともいうらしい。九州征伐のおり博多箱崎に滞在した太閤秀吉に対して、千利休は浜辺の松原で松葉を集め、これを燻(ふす)べて湯を沸かし、茶をしばいた故事に由来するとか。野で求めた燃料で湯を沸かすと茶水にもこの燻べた香りが移り、独特の風趣を加えるそうだ。火を眺めながら茶を啜っていると、これか……といった感じになる。
尤も、この日のような風の強い日は、茶器に湯を注いだ側から急速に冷めていくので、茶の味としてはそこまで良いものにはなっていなかったかもしれない。もっと暖かくなったらより美味しいお茶をしばくことが出来るようになると思う。
おわりに:野点のpros and cons
中国茶で、特に焚き火を利用して野点をする利点・欠点について考えてみる。利点としては:①湯を沸かし続けられる、②茶渣も燃やせる、③湯が溢れても気にならない、④非日常感、の4点が挙げられよう。
一方で欠点としては:①天候によっては湯が冷めやすく、茶水の味に影響を及ぼす、②焚き火の香りが支配する空間で、茶の繊細な香りや味を楽しむことが困難、③火の後始末が少々面倒、④不安定な場所で磁器を使うのが怖い、といったことが考えられる。
②についてはこういう場面に相応しい茶葉を検討する、そもそも普段使いのカジュアルな茶葉をガンガン飲んでいく感じなら大した問題じゃない、といった対応が可能であり、③はアウトドアで全般に伴う面倒臭さなのでその面倒を楽しむ、ということになろうか(熟練していけば手際も良くなる筈)。バーナーを使ってもよいのだが、そうすると何回も点火して湯を沸かし直すことになり、興が削がれるというか……
④の携帯茶具について、屋外で磁器使うのは少々怖いので、色々見ていると、中国のアウトドアブランドでチタン製品に力を入れている所が蓋碗や茶壺を販売しているのを発見した(以下のリンク参照)。これらのメーカーは日本Amazonにも出品しているのだが、こういうキワモノ商品は当然売れ筋にならないので取り扱いが無い。でもチタンは軽いし、熱伝導低いから手で持っても熱く感じにくいし、イオン化しにくいから金属臭もしないと、茶を淹れるにあたってはかなり有利な素材であると思う。使用感など是非知りたい所だ(誰か人柱になってください)。
keithは蓋碗、公道杯、茶漉し、飲杯*3のセットも販売していた。3マン……屋外で使うなら、公道杯や飲杯は雪峰みたいな二重構造の方が適しているかもしれない