亞的呼聲 Adiffusion

中華と酒と銭湯と

空前の「土製菠蘿」ブーム

といってもマイブームなのだけど。それは「土製菠蘿」だ。
 本来「土製菠蘿」というと広東語では手製の爆弾のことを言って(多分手榴弾がパイナップルに似ているからだと思う)、六七暴動の後半では火薬を缶に詰めたこの土製菠蘿が香港のあちこちに仕掛けられ、子供が亡くなるまでに発展した。
 この「土製菠蘿」の記憶は香港返還後、政府が在地の「左派愛国人士」の再評価・顕彰を行おうとする際の大きな障碍になっており、今般の政治風波でも工聯會が「暴徒の始祖」と言われたりするなど、今でも尾を引いている。(逆に、これがあるので今の示威者がどんなに過激化しても無差別爆弾テロは絶対にしないだろう、という安心感はある)

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この写真、とても有名だが出処が不明だ。土製菠蘿という語も同胞勿近という語も、当時の新聞ではあんまり使われていなそうなので、調べづらい

 でも今回はそんな物騒なものではなくて、本当の「土製菠蘿(手作りのパイナップル)」だ。前回の記事で路上でインディーズの野菜を買っている話をしたが、これもインディーズの果物だ。最近は体細胞がほぼストリート育ちになっています。

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うるせえ!

 

2020年7月26日

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 石湖墟街市付近の路上でお婆さんが売っていたのを見て足が止まる。郷村に行くとたまに畑に植えてあるのを見ていて、気になっていたのが急に思い出された。
 並べてある3つの菠蘿はどれもかなり小振りだったが、そのうちの一つは赤く熟していて、マスク越しにも強烈な甘い香りが漂っているのを感じることができた。30ドル。小さいくせにまあまあするなと思ったが、惠康で台灣鳳梨が1つ40ドル超なので、そんなものだろうか。

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葉を捻り取り、頭と尻とを切って6等分する。芯は硬いので削るのだが、果汁が滲みていて勿体ないのでしゃぶってから捨てる。だって30ドルもするのだから……

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完熟しているからか、包丁が抵抗なく入る。一口食べて、荔枝の季節が終わったら次はパイナップルの季節なのだな、と感動し全てを理解した。

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南洋では辣椒粉をかけて食べることもあると聞いて試した。スイカに塩振るような感じで甘味が引き立つ。甘辛酸、南洋人は一度の食事で多くの味蕾を使いたがると思う。

 

2020年7月30日

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別のあばあさんが粉嶺から持ってきた菠蘿。この日のはやけに大きく、どれも美味しそうな感じで赤みがかっていたので購入。75ドル。結構してしまった……

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かなりでかい。自分がこれ持ってる写真、気に入ったのでLINEのプロフィール画像にしてしまった。

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本当は多分この点々が無くなるまで皮を剥くのだろうけど、芯すらしゃぶる人間なのでそんな勿体ないことはできない。多少食感が悪くなる程度のことである。

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同じ皿に並べてみると、前の奴の倍身があり、75ドルというのも妥当な値段だったと分かった。3日間かけて(多分日持ちギリギリだと思う)じっくり味わった。

2020年8月4日

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粉嶺パイナップルババアに顔を覚えられ、冷蔵庫に残りがあるうちも毎日パイナップル買いな!と言われるようになっていた。食べ切ったのでようやく購入。2つで80ドル!と言われたが、2個解体する気力も食べきる自信も冷蔵庫のスペースも無く、一番大きいものを50ドルで購入した。

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もうだいぶスムーズに解体できるようになっている。解体楽しい

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自分しか楽しくないのだが、保存容器に綺麗に詰められると嬉しい。味は当然美味い。


 あれから一週間以上、毎日路上のおばあさん方の品揃えを確認しているのだが、粉嶺のおばあさんも誰も菠蘿を持ってこなくなってしまった。今ではあの時に2個80ドルで買っておかなかったことを後悔している。これを食べ終わってから「次見かけたら必ず買って、今度は咕嚕肉とか作ってみようかな」とか思っていただけに残念だ。7月下旬から半月ほど見かけたので、多分もう旬は終わってしまったということなのだろう。
 次また見つけたら絶対買おうとは思っているけれど、無いなら無いで次の旬はなんなのか、ストリート系の婆さま方はいつも僕にトキメキとワクワクを与えてくれる。自分もここの婆さん達のように、逞しくも愛らしい歳の重ね方をできるだろうか……あと、毎日同じ所に座っているのを確認できるととてもホッとする。これが、恋……?