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衛奕信徑第9段の眺めが最高だった(香港の山がすごかった②)

更新が延び延びになってしまっているが、忘れないうちにメモっておかなければならない。大埔という街は入江の一番奥まったところにあって、その両側には美しい山々が並んでいる。

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今回は馬料水側からみると屏風のように並んでいるこいつ、屏風山〜皇嶺~八仙嶺の尾根筋を歩いてみたいと思います。 

衛奕信徑第8段~九龍坑山~衛奕信徑第9段(前半)~鶴藪水塘

 第8段は中盤で大埔市街地を横断するため、自分としてはアクセスが容易だ。ofoを駆って、一気に九龍坑山の麓、大埔頭村までたどり着く。ここにある公衆トイレが水塘までの最後のトイレなので、必ず行っておいた方が良い。

衛奕信徑第8段

 トレイルが再び登山道になったところで、尾根筋には鄧家の墓所が現れ始める。大埔頭村の鄧家は新界五大氏族の一つ、錦田の鄧氏の一支族で、村内には立派な祠堂兼家塾が残されている。一族は尾根に沿って南面し、村を見下ろす日当たりのいい土地に墓所を構えている。きっと風水もいいのだと思う。

 政府が公園地として整備をしようと、原居民達が以前から持っていた墓所については中々移転させることは難しい。他のトレイルや公園でも、こうした墓所は頻繁に見かける。イギリスがやってくる以前から新界に入植していた原居民の土地を中心とした諸々の権利は返還後も守られており、新界の開発に当たっては屡々政府と対立している。 

衛奕信徑第8段

 大分奥まったところにいきなり戸建ての高級分譲住宅地が現れる。ここ康樂園は蒋介石との対立の末下野した粵系軍人の「河南王」李福林が晩年を過ごした広大な果樹園の跡地で、近隣の公共施設には李の名前が冠されたものもある。

衛奕信徑第8段

あまり伝わらないと思うが、結構な傾斜だ。このルートは急峻な尾根を直登させる部分が多く、結構しんどい。笑

衛奕信徑第8段

登り終える。この山頂には玉秀峰という愛称が付いているらしい。山頂には三角点とベンチがあり、しばし休んだ後に九龍坑山の山頂を目指して行く。

衛奕信徑第8段

恐らく第8段の一番の目玉であろう景観が現れた。かなり急なコンクリ階段が張り付いている。山頂は写真右奥に見えるアンテナの直下なので、階段を登ってからは然程のアップダウンもなく、日差しと風を浴びながらのんびり進める。

衛奕信徑第8段

衛奕信徑第8段

着いた!九龍坑山の山頂はトレイルからやや外れているのだが、合流先からの道を間違えてしまったりして30分ほど時間をロスしてしまった。

衛奕信徑第8段

九龍坑山山頂の前で衛奕信徑の第8段は終わり、ここからは第9段。電波の入りも悪い山奥から高層ビル立ち並ぶ深圳の市街地を望む。この距離にこの風景、かなりアンバランスな感じがする。

衛奕信徑第8段

水塘には着いたが、すでに16時。そこから先の屏風山への直登の厳しさや日没までのタイムリミットを考えて、今回はここを中間セーブ地点として終了。ダムから鶴藪村へ下り、ミニバスで粉嶺まで帰った。

沙螺洞~鶴藪水塘~衛奕信徑第9段(後半)

第9段の中間セーブ地点とした鶴藪水塘から再開するため、まずは前回と違うルートで水塘を目指す。ofoで川を遡り、鳳園から山に入っていく。

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

原居民の墓が並ぶ丘を越えていくと少し開けた土地が現れ…

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

デベロッパー(沙螺洞發展有限公司)の地上げに反対する村民の垂れ幕が延々並んでいるのが見えてきた。所々独立派による落書きもされている。

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

そして突然眼下に廃?村が。そう、この沙螺洞なる盆地は、古くから人が入って耕作をしていた所。80年代からゴルフ場建設と宅地開発を狙うデベロッパー、反対派の村民、貴重な湿地があることからゴルフ場も村民の農地もまとめて排除したい政府との三つ巴の争いが続いてきた場所であるらしい*1。今年に入って漸く決着がつき、デベロッパーは政府と土地交換をし、村の土地は政府所有となったそうだ*2。これまでは村民が植えた菜の花が観光名所にもなっていたようだが、湿地保護の観点からこれが問題となり、来年からは姿を消すという。

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

ここは張屋という字であり、名前の通り張氏の単姓村。地上げを拒んで唯一住み続けていた村民が経営する休憩所と廟だけに人の気配があり、多くの建物は廃墟と化し、デベロッパーによる「公司物業」との文字が残されている。

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

廃屋を通り抜けて村の裏側に出た。ここが菜の花畑だった場所らしい。背後に見えるのが今日の目標である屏風山から八仙嶺へと至る山並み。たしかに、ここに菜の花が咲いていたら美しいことだろう。

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

村を出て、かつては田畑が広がっていたんだろうなあ、と思しき道を進む。

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

森に入ると傷みの激しい石畳の道が現れた。鳳馬古道といって、大埔側から鳳園、沙螺洞を抜けて鶴藪へと下り、沙頭角や粉嶺方面の村や市集とを接続する道だったらしい。そのため比較的アップダウンも少なく、道幅は狭いながらも快適なルートを選んで道が作ってある印象を受ける。

鳳園~沙螺洞~鶴藪水塘

すぐそばには清浄な水が流れていて、歩いていて気持ちいい道だ。そうこうしているうちにofoを降りてから1時間ほど、すぐに鶴藪水塘に着いてしまった。

衛奕信徑第9段

というわけで、衛奕信徑第9段再開。トレイルは水塘から一気に屏風山の頂へと辿り着こうとするので、強烈な上り坂が続く。息を切らしながら登っているとすぐに森が消え、頼りない灌木と脆そうな岩肌が露出した山体が眼前に広がった。この山の頂まで行けばさぞかし気持ちいい眺めなのだろう、そう思って進んでいく。

衛奕信徑第9段

今日も深圳がよく見える。

衛奕信徑第9段

大分登ってきた。

衛奕信徑第9段

山頂付近の谷間に辿り着いた。標高500m台とは思えない光景に驚く。

衛奕信徑第9段

石灰質の岩肌に草木が張り付いている。谷の底には細い川があり、透明度の高い水が流れていた。湧いているのか、雨水なのかは分からない。

衛奕信徑第9段

川の水で汗を流してから、別世界のような風景を進む。道は地面が露出しているので浸食がものすごく、以前の舗装はほぼ全滅している。

衛奕信徑第9段

ここで尾根筋を辿るため、大きく南東へとカーブする。きた道を振り返ると、幾重にも連なる山々の両側に、深圳の新市街と沙頭角の街が見えて圧巻。市街から2時間でこの眺め、最高すぎる。あとは延々この尾根筋に沿って進むだけ。日没との戦いだ。

衛奕信徑第9段

衛奕信徑第9段

振り返ると深圳。尾根は本当に屏風のような断崖絶壁で、それなりに気をつけて歩く必要がある。トレイル本体はたまに尾根筋を外れてピークを巻くことがあるが、そのまま尾根を突っ切る非公式なルートも作られている。

衛奕信徑第9段

衛奕信徑第9段

 黃嶺(639m)到着。蝶や蜻蛉、それを捕食する燕が飛び交っている。

衛奕信徑第9段

南に目を向けると船灣淡水湖や馬鞍山、西貢の山や島々が見える。

衛奕信徑第9段

 

山頂でのんびりしているうちに大分日が傾いてきた。この尾根が切れるところまででないと人里に降りることができない。急がなければ…

衛奕信徑第9段

最高峰の黃嶺を越えると「八仙嶺」。8つのピークをアップダウンしながら、次第に標高は下がっていく。

衛奕信徑第9段

八仙嶺の最後、仙姑峰を目前にしてタイムリミットが訪れてしまった。綺麗すぎる夕陽に目を奪われている場合ではない。森林が回復してくる下りの道の方が光が必要なのに…

衛奕信徑第9段

仙姑峰から一気に下り、八仙嶺自然教育徑との分岐点に到着。ここで衛奕信徑第9段は終了。10段は次回に回し、自然教育徑を通って(ここも山奥の村々を通って沙頭角の市に抜ける古道らしい)ダム湖の入り口まで出られた。バスに乗って帰宅。

衛奕信徑第9段

ダム湖を眺められるあたりはまだ空の色も明るかったが、森の中に入る頃にはほぼ光がなく、いろいろな動物の鳴き声がして非常に不安だった。ライト持ってきていてよかった。