亞的呼聲 Adiffusion

中華と酒と銭湯と

虚ろな心に火を灯せ、或いは男5人の『ゆるキャン△』

 燃え尽き症候群という言葉がある。また、人の命は蠟燭の灯火に喩えられたりもする。我々人間は、日々何かを火に焚べながら己の生を全うせんとしている。

 去年の終わり頃、自分は非常に疲れていた。“燃え尽き”かけていたのかもしれない。何か漠然と、““活力””を注入しなければいけない気がした。そうだ、火を焚べよう。悲しみも暖炉で燃やすものだと吉田拓郎だか森進一だかも言っている。というわけで、同じように疲れている人間が集まって火を焚べることになった。

買い出しと松田散策など

別に寒空の下テント張ったりはしたくないので、床暖、灯油ヒーター、寝具付のクソヌルコテージを借りることになった*1。昼前に買い出しを行う。

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 山奥へのバスが出るのは小田急の新松田だったが、近傍の商店情報が何も分からなかった。インターネットは本当に使えない。そこで、隣のいかにも棒倒しが好きそうな名前の駅に行き、マックスバリュで買い出し。普段まともに自炊をしないオタク連中(含自分)は本当に買い物が下手。正直買い過ぎであった。

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 新松田に戻り、食堂で蕎麦をすすり、バスまで1時間ほど駅周辺を散策。普通にスーパー、肉屋、八百屋、魚屋、酒屋があって、わざわざ隣駅に行く必要のなかったことがわかる。というか、普通に過ごしやすいいい街だなあ。駅前には上のような立派な酒蔵(松美酉)もあり、試飲してコテージへ持って行くものを吟味。

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 純米吟醸が非常に飲みやすくて美味しかったのだけど、今回は純米酒にした、理由は後述……JR駅裏にある酒蔵は、小田急駅前に小売店も持っていて(中沢屋)、そちらではバスで飲むビールを購入したり、カウンターがあったので角打ちをキメさせていただいたりした。

 新松田駅前を出たバスは、御殿場線沿いを進んだ後、一気に丹沢湖へと登って行く。地元の珍味をボリボリつまみながらビールを飲んでいたら、丹沢湖畔で小学生が乗り込んできて気まずかった。みんな一帯の集落からバス通学しているようだ。20180127-153804-37
 70分ほどかけて、丹沢湖より上流の終点に到着。日が落ちかけているのでさっさと火起こしをしなければならない。場内は一面の雪!!元々段取り悪いし経験値もない男たちが、昼過ぎからゆったり集まってるべきではなかったんだよな……

火起こしと、晩飯

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 手続き等を済ませてコテージに戻ると、『ゆるキャン△』に影響されて友人が買った焚き火台が早速活躍していた。直火OKのキャンプ場とはいえ、こうも積雪していては、台がなければどうにもならなかったであろう。『ゆるキャン△』には感謝の気持ちしかない。といってもまだ薪に火はついていない。雪のせいか、薪も炭もやや湿気ってる感じだ。日が沈みつつある。大丈夫なのか…

  取り敢えず手分けして野菜を切り始めた。このコテージ、床暖も灯油ヒーターも付いている、非常に緩いものなのだけど、何故か台所周りだけは床暖がなくて、非常に厳しかった。

今回、自分は池袋の中華スーパーで購入した火锅底料と、後輩から貰った台湾土産の白酒を持ち込んでいた。火鍋のため、買い出しではキノコと羊肉などを沢山買っていた。

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 しかし、メンバーにもう1人白酒を持ち込んだ人間がいた。まさか白酒がダブるとは思わなかったよ……。火起こし担当者は、コップに余った白酒を火に注ぎ込んで遊んでいた。勿体無い。

  オタクがダークソウルカメラを正しく使っていた。山奥なのでこういう奇跡も起こる

 悪戦苦闘していた火起こしの方も、着火剤買ってみたりダンボール焼いたりなんかして、なんだかんだで炭の方に火が移ってくれたようだ。火がある程度落ちついてきたのを待って、ガンガン焼き始める。結構なペースで焼いていた、もっとゆっくりでもよかったのではないか…?

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とはいえ、火の回りに椅子もないし、みんな腹減っているので仕方がないか。本郷山手でお役御免になったバーナーは、シイタケに乗っけたマヨネーズを焦がすのに使いました。ハンドバーナーは便利だし、楽しい。

適宜食いつつ(結果としてあんまり食えなかったが)、自分の鍋の方も作っていく。

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今回使う小肥羊の锅底は、このように粉末スープ、ラー油、唐辛子、豆豉が小分けの袋に包装されている。油は植物系で、標準的な清油火鍋と言えよう。小肥羊という大手会社のものなので、安心感もある。

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みてくださいこの超毒々しい見た目。でも、これが美味いんだよな。湯を注ぐと一瞬で部屋中に火鍋の薫りが広がり、楽しみになってくる。

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ゆったりしゃぶしゃぶしている感じでもないだろうと思い、肉以外はしっかり煮込んだ上でタレは使わないで食べる感じでやることにした(冒菜的な?)。そのまま食う際のパンチも考えて、事前に鯛のアラ、というか頭部を投入。グツグツ煮込みすぎたことや、肉をガンガン投入したこともあり、想定よりマイルドな味わいに……まあ、日本式の鍋みたいになってしまったが、これはこれで美味かった。白酒もバンバン進む。しかし、慌ただしすぎる。火鍋はもっとこう、ゆったりと食うものなんだよな…

燗銅壺

一通り飯も食ったので、ゆっくりと酒を楽しむ時間にしようと思った。
 今回の火遊びの個人的な目的の一つ、それは深夜のテンションで競り落とした後、自室の片隅で2年近くひっそりと眠り続けていた燗銅壺の実用だった。

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 燗銅壺、野燗炉、などと言われるこれ、炭火を真ん中のロケットストーブみたいなところに入れておくと、その熱で銅壺内の水が温められ、お燗を付けることができる、というもので、湯煎に特化したマシンなのだ。炭の上に網おいたり、缶詰乗っけたりすると、ちょっとしたつまみも調理できる。
 もっとも、今回は普通に炭も焚き火もあるので、調理にこいつを使う必要はないし、なんならちろりさえあれば鍋使ってお燗をつけることもできたので、完全な自己満足なんだよな。まあアウトドアってつまるところ「態々」を楽しむ自己満足に尽きると思うので、やりたいからやったで良いんだろうと思う。
 今回使う日本酒は、神奈川縛りをかけて、盛升の特別純米と、松美酉の純米酒にした。後者は試飲の際に、燗によいとおばちゃんが勧めてくれたもの。米の旨味が強くて、飲みごたえがあった。それぞれ、どう変わるか…

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 恐らく零下を回っているであろう屋外で炭を入れてみる。燗銅壺、驚くべきはその保温性能の高さだ。一度温まると、ちろりに入れて30秒ほどですぐに燗ができている。あまりの寒さに1,2時間ほどで2本とも飲み終えてしまったので、そこでお役御免になってしまったのだけど、それから深夜まで、ずっと火が残っていた。
 燗をつけたお酒は、ずっと香りが良くなり、口当たりもまろやかだった。外で雪を眺め、焚き火にあたりながら飲むと、体の奥に火が灯ったように、内側からじんわりと温まってくるのを感じる。次はお花見の時に日本酒何本も持って行ってやりたいです。

お土産というか、同行者の元カノ(?)ゆかりの鮭とばを炙り、日本酒を舐めるのは最高

燻製

夜も更けてきた。ビールも日本酒も尽き、ゆっくりとウイスキーを舐める時間がやってきたということだ。

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 しかし、積雪後の山奥は予想通りといえば予想通りだけど、超寒かった。焚き火に向かっていると腹側は必要以上に暖かいのだけど、背中から無限に熱が奪われて行くのを感じる。火が弱くなると一気に寒さを感じてしまうので、薪の消費スピードも想定以上だ。井桁に組むと火勢が強くてとても暖かいが、30分に2本足さないといけない。
 そういういうわけで、ウイスキーも温かく飲みたいということになった。買い出しの際にインスタントコーヒーを得ていたので、焚き火で湯を沸かし、雑にアイリッシュコーヒーを作っていく。

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 凍える感じも楽しみながらコーヒー飲んだり夜空を眺めたりしていると、寝ていたオタクが起きてきたので、彼の持参品である燻製器を使ってつまみを作ることにした。タネは事前に茹でて乾かしておいた卵と、プロチ。チップはたしか桜だったと思う。
 焚き火台の上に燻製器をのせ、しばらく待つ。多分火力は強すぎたし、飲みながらぼーっとしていたので燻製時間も長すぎたかもしれない。画像はプロチのものだけど、想定以上に茶色くなっている。外側はやや苦味も感じさせたが、濃厚なスモーク臭と中の柔らかくなったチーズが最高だった。
 燻製たちをつまみつつ、更に何杯か飲んだ後、自分は這うようにして布団に潜り込み、意識を失った。

耐えられない寒さで起きた。時間は8時。基本夜型の生活なので、いつもより健康的な時間帯に健康的な量の睡眠を取れたと思う。すでに6時から起きていた人間は優雅に朝食を取っていた。自分は起きていなかったのだけど、

こういう異常な“朝飯”や、

 凍てついた燻製と酒、

 そしてQoL高めの朝食が存在していたらしい。

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自分も火鍋の残りに水餃子突っ込んだものや、友人の東京土産である千駄木腰塚のコンビーフ的なものを頂いてカロリーを補給する。チェックアウトとバスの時間まで2時間半しかないので、片付けも急いでいく。分別すればなんでも捨てていけるので、ここは便利だった。また使いたいキャンプ場ですね。

帰路、鶴巻温泉

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 山奥では雪がパラつく中でカモシカ眺めたり、バスで余りの最悪アルコールを飲ん(残し)だりしながら、なんとか下界に着いた。一晩中燻製されたキモ人(ひと)の臭いを撒き散らして電車に乗り続けるのは世間様に申し訳ないので、途中鶴巻温泉に立ち寄ることにした。 

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 鶴巻温泉東横線で言うところの綱島温泉みたいなところで、かつてちょっとした温泉郷だったところが郊外住宅地に飲み込まれている。とはいえ、将棋界では有名らしい陣屋をはじめ、まだまだ温泉宿も数軒残っており、立ち寄り湯も出来る。
 今回寄った「弘法の里湯」は、かつて近傍にあった温泉会館の後釜の公営施設で、廃業した老舗旅館「光鶴園」*2と、秦野市が駅前で新規採掘した源泉を使っていた。ヌルヌル感は薄いが、アルカリ系で肌がツルツルになるのを感じる。
 施設内には蕎麦屋と休憩所、マッサージがあり、2時間800円の利用時間中にアルコールも楽しめる(流石にもう酒飲む気にはなれなかったが…)。秦野市民には優待価格も設定されているようだった。こういうところ、近所に欲しいですね。疲れを癒して帰宅。泥のように眠った。

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なんと温泉スタンドが無料!本当に近所に欲しい笑

まとめ

始終グダグダだったがやりたいことは全部やり遂げ、身も心もリフレッシュできた。ぬるぬる冬キャンプの魅力を考えると、

・極寒の中火の温もりが嬉しい

・あったかいアルコールが美味しい

・人が少なく、ショバ代も割安

・寒い中浸かる露天風呂は最高

というものがあった。冬は日照時間も短いし、気温も低いし、一年を無理にでも締めくくらないといけないしで全体的に気分が落ち込むことが多いので、こうやって物理的に心身に点火していくイベントがあると、色々捗るなあ、と思った。
 また冬に似たようなことをやりたい。というか、久々のアウトドアも楽しいものだったので、日帰りでいいので冬に限らずちょくちょくやっていきたいです。

追記:

mikoyann.hatenablog.com

今回の火遊びに恐らく一番熱心であったろうみこやん君が別視点でブログを書いてくれました。よろしければこちらもご覧ください。

ゆるキャン△ 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

ゆるキャン△ 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 
燻製の基本

燻製の基本

 

 

*1:余談だが、買い出し中魚屋のおっちゃんに寒さを心配されたので上述のヌルい環境を説明すると、「そんなんハイアットに泊まるのと変わんないじゃねえか」なるコメントを賜ったので、今回泊まったコテージは通称「ハイアット」となった。「ハイアット」、交通の便は良くないけど本当にオススメです

*2:今でも街中にある常夜灯や石碑にその名が残っている